○阿波市中小企業振興基本条例
平成30年12月18日
条例第33号
阿波市は、徳島県の中央北部に位置し、山河に広がる美しい自然に囲まれ、温暖な気候と市の南部を流れる四国最大の河川・吉野川がもたらした豊かな土壌に恵まれていることから、古くから高品質な農産物を供給する県下有数の農業地域として発展してきた。
また、交通の要衝という地の利を生かし、大規模な工業団地の造成に伴う企業進出や、「阿波の土柱」をはじめ、「四国八十八箇所霊場」の四ヶ寺、「御所のたらいうどん」などの歴史・文化を持つ観光資源にも恵まれた地域であり、その特色を背景に多様な産業で成り立ってきた系譜が、今日の産業構造に脈々と息づいている。
その中にあって、市内企業の大多数を占める中小企業は、地域の経済と市民の雇用を支え、その発展に寄与するとともに、まちづくりにおいても地域社会の担い手として重要な役割を果たし、阿波市の発展と市民生活の向上をもたらしてきた。今日の阿波市があるのも、市内中小企業者等のたゆまぬ努力によるものである。
しかしながら、近年、経済活動の国際化や企業間競争の激化に加え、人口減少や都市部への人口集中、少子高齢化の進展等による地域内の経済活動の低下により、地域経済の基盤である中小企業を取り巻く環境は厳しい状況に置かれている。
このような状況の中で、阿波市の経済及び社会が将来にわたり持続的に発展していくためには、中小企業者等の自主的な努力はもとより、地域社会全体が中小企業者等の果たす役割とその重要性を理解し、その成長を支援していくことが重要である。
よってここに、中小企業の振興を市政の重要課題として位置付け、地域社会が一体となって中小企業の振興に取り組むため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、阿波市における中小企業の振興に関し、その基本理念及び施策の基本方針を定めるとともに、市、中小企業者、小規模企業者、中小企業支援団体等の役割及び責務を明らかにすることにより、中小企業の振興に関する施策を総合的に推進し、もって地域経済の健全な発展及び市民生活の向上を図ることを目的とする。
(1) 中小企業者 中小企業基本法(昭和38年法律第154号。以下「法」という。)第2条第1項各号に掲げる者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。
(2) 小規模企業者 法第2条第5項に規定する者であって、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。
(3) 中小企業者等 中小企業者及び小規模企業者をいう。
(4) 中小企業支援団体 商工会その他の中小企業の振興を図ることを目的とする団体をいう。
(5) 大企業者 中小企業者等以外の事業者であって、市内において事業活動を行う企業をいう。
(6) 金融機関 市内に本店又は支店を有する銀行、信用金庫その他の金融機関及び徳島県信用保証協会をいう。
(7) 教育機関等 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校及び職業に必要な能力を育成することを目的とする機関をいう。
(8) 市民 市内に住所を有する者及び市内に通勤し、又は通学している者をいう。
(基本理念)
第3条 中小企業の振興は、中小企業者等の自らの創意工夫及び自主的な努力を基本として推進されなければならない。
2 中小企業の振興は、中小企業者等の経済的社会的環境の変化への円滑な適応が図られなければならない。
3 中小企業の振興は、市、中小企業者、小規模企業者、中小企業支援団体、大企業者、金融機関、教育機関等及び市民が相互に協力して推進されなければならない。
4 中小企業の振興は、中小企業者等が地域社会の発展及び市民生活の向上に重要な役割を果たしているという認識の下で推進されなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条の基本理念に基づき、中小企業の振興に関する施策を策定し、及び実施するものとする。この場合において、市は、本市の中小企業者等の多数が小規模企業者であることに鑑み、小規模企業者の経営の状況及び成長発展の状況等を考慮するよう努めるものとする。
2 市は、市が発注する工事の請負、役務の提供、物品の購入その他の調達に当たっては、予算の適正な執行並びに透明かつ公正な競争及び契約の適正な履行の確保に留意しつつ、中小企業者等の受注機会の増大に努めるものとする。
3 市は、中小企業の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(中小企業者等の役割)
第5条 中小企業者等は、経済的社会的環境の変化に即応して事業の成長発展を図るため、自らの創意工夫及び自主的な努力の下、経営の革新及び経営基盤の強化を図るよう努めるものとする。
2 中小企業者等は、自らが地域経済の基盤を形成していることを認識し、雇用環境の整備、雇用機会の確保及び雇用の維持並びに人材の育成に努めるものとする。
3 中小企業者等は、地域社会を構成する一員としての社会的責任及び役割を認識し、地域社会の発展及び市民生活の向上に寄与するよう努めるものとする。
(中小企業支援団体の責務)
第6条 中小企業支援団体は、中小企業者等に対し、その事業活動に必要な情報を提供するとともに、中小企業者等の経営の改善及び向上に主体的かつ積極的に取り組むものとする。
2 中小企業支援団体は、自らの専門性の高い知識及び事業活動を通じて、市が行う中小企業の振興に関する施策に相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。
(大企業者の役割)
第7条 大企業者は、中小企業者等が自らの事業活動の維持及び発展のために重要な存在であることを認識し、中小企業者等との連携及び協力に努めるものとする。
2 大企業者は、中小企業の振興が地域経済の発展において果たす役割の重要性を認識し、市が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(金融機関の役割)
第8条 金融機関は、円滑な資金の供給や経営相談等の支援を行うことにより、中小企業の発展に協力するよう努めるものとする。
2 金融機関は、中小企業の振興が地域経済の発展において果たす役割の重要性を認識し、市が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(教育機関等の役割)
第9条 教育機関等は、児童及び生徒に対して、中小企業者等が地域社会の発展及び市民生活の向上に重要な役割を果たしているという理解を促すとともに、地域の次世代を担う人材の育成に協力するよう努めるものとする。
(市民の理解及び協力)
第10条 市民は、中小企業の振興が市民生活の維持及び向上において果たす役割の重要性を理解し、中小企業の健全な発展に協力するよう努めるものとする。
2 市民は、消費者として、市内において生産され、製造され、又は加工される製品の購入及び消費並びに市内で提供されるサービスの利用に協力するよう努めるものとする。
(施策の基本方針)
第11条 市は、次に掲げる基本方針に基づき、中小企業の振興に関する施策を講ずるものとする。
(1) 中小企業者等の経営の革新及び経営基盤の強化の促進を図ること。
(2) 中小企業者等の販路及び受注機会の拡大の促進を図ること。
(3) 中小企業者等の人材確保及び育成の促進を図ること。
(4) 中小企業者等の創業の促進を図ること。
(5) 中小企業者等の円滑な事業承継の促進を図ること。
(6) 市内の経済循環の創出を図ること。
(7) 前各号に掲げるもののほか、中小企業の振興のために必要な施策の推進を図ること。
(協議の場の設置)
第12条 市は、この条例の目的の達成及び中小企業の振興に関する施策を推進するため、協議の場を設置するものとする。
(実施状況の公表)
第13条 市は、毎年度、中小企業の振興に関する施策の実施状況を公表するものとする。
(委任)
第14条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附則
この条例は、平成31年4月1日から施行する。